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忘れてはいけないこと

カテゴリー:日々清々 更新日時 2022/03/01

11年前のあの時から、3月は私にとって鎮魂の月になった。

 未曾有の大災害の東日本大震災。繰り返される震災の報道に心を痛め、福島県白石の親戚のことを母と電話で話していた翌日、震災から4日後に母が動脈瘤解離で突然亡くなった。母の死を知らせてくれたのは、母の愛犬だった。

 その時から私は震災のニューズをまったく見られなくなった。突然大切な人を喪う悲しみと恐怖。ましてや激震と大津波で命や財産や思い出や希望や未来を喪った人たちの苦痛を思うと胸が苦しくて見ることができなかった。

 たぶん、その時の私は自分の苦しみに直面することさえできていなかったからだと思う。

 

 若い頃、いつからかは憶えていないけれども、日本を襲った悲劇はちゃんと見ておきたいと思って日本各地の第二次世界大戦の戦跡を回り始めた。

 広島 長崎 沖縄(ひめゆりの塔 摩文仁の丘)知覧 靖国(順不同)

 そこには多くの国民、兵士市民を問わない、のそれぞれの命や幸せや希望が奪われた記録が残されていた。そして今の平和を享受している私たちはその人たちの悲劇の歴史を知るべきだと思っていた。

 

 翻って、東日本大震災から私はずっと目を背けていたように思う。

 10年以上経って、ようやくその事実を直視し始めている。

 気がついてみると阪神淡路の震災の当時にはなかった現象があった。多くの市民による記録が集められていた。報道の専門家によらない、画質も撮り方も決して良くはないが、生々しい人間の記録が夥しく残されていて、各テレビ局や県等によってアーカイブされていた。アーカイブされている画像を(FNNとNHK)スイッチを切りたくなるのをこらえて見続けた。

 カメラの前を歩いている人の姿が津波に呑まれる画像。家がきしみ車が浮き沈みしながら流されていく音。高台にからくも逃れた人たちの悲鳴、絶望の言葉。

 生と死を分けた小さな偶然の連鎖。

 

 私たちはこれらを忘れてはならないと思う。戦争の記録も震災の記録も単なる過去の悲劇、ではなく、これから起こりうるかもしれない悲劇の一歩なのかもしれないし、今も痛みを感じている人たちに心を寄せ続けたいと思う。そして、知ることでこれからの防ぎ備えるべき知恵を「尊い犠牲という悲劇」から学ばなければならないのだと思う。

 毎日深く祈っている。

 遺された方々の心に平安が訪れていますように。生活や日々に希望が持てていますように。二度とこのような悲劇が訪れませんように。 

 そして、今、新型コロナ感染症という世界を覆う災害が私たちを襲っている。多くの方々が感染し亡くなり、生活を脅かされている。今こそ、私たちはそこで苦しんでいる方々に思いを寄せて日々を過ごせる人たちでありたいと願う。

 

地域医療の日々~たくさんの小さなキレイな光に囲まれて~ 奪われる命の痛み

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