ドクターブログ たくさんの小さな光に囲まれて

胸きゅん物語 1・2・3 第三位!

カテゴリー:ターミナルケア  更新日時 2008/07/10

 しばらくブログをお休みしていたら、けっこういろいろなところからチクリと背中を押していただいて、久しぶりのブログです。見ていただいていることがわかってうれしくもありました。
  「忙」とは「心を亡くすこと」と高校生の時に教えられました。忙しいと他人に対して関心が薄くなるし、思いやりの心も感動の心も薄くなるような気がしま す。ブログを書けなかったのも、もしかしたら忙しさを言い訳に私の心のアンテナが狭くなっていたのかもしれないと、大反省です。
 というわけで、最近の胸きゅ~~~んのワン・ツー・スリー です。

第3位
 ヘルニアの手術で病欠していた事務のさん。病院に出勤してくるなり、
「先生!お話しがあります!」私は内心ドキドキ。いったい何があったの?
「動けないで寝ている間患者さんや病院のことばっかり考えていたんですけど・・・」
 この国の医療を取り巻く状況は悪くなる一方で、経済的に苦しい人や体の弱い人たちを直撃しています。そこで、増え続けている診療を制限せざるを得ない人や生活を切りつめながら受診している人たちになにかできないか、と彼女は寝ながら考え続けていたらしいのです。
 「この人たちに○○○の制度を使えるかもしれません!」医事職員としての誇りと責任感できらきらした彼女の目を見ながら、私は胸きゅん。
 ただ受付と会計をするだけれはなく、患者さんの目線で、患者さんの生活を思いやりながら医事の仕事ができるってスゴイ!しかも病欠中に!
 医療職の中で、比較的専門性に乏しい職種かなと思っていたけれども、逆に患者さんに向かいあうことのできる、文字通りの「フロント」としての彼女のプロ魂が胸きゅんの第三位でした。

第二位はちょっとおいておいて
いきなり第一位!!
  私達の病院では、お亡くなりになった後四十九日頃をめどにお悔やみ訪問に行っています。八十九歳の太郎さん(仮名)のお悔やみに伺ったら、奥様とお嫁さん が待っていて下さいました。パーキンソン病で長く闘病された太郎さんは、奥様の文字通り全身全霊を尽くした介護で長く在宅でおられた方です。そして、その お母さんを支えたのが息子さんご夫婦でした。
 「ばあちゃん最近少しだけビールを飲むようになって、肥ったの」お嫁さんが優しいまなざしでおばあちゃんを見つめながら言います。
 「じいちゃんが生きているときは、何事もじいちゃん第一だったから一口も飲まなかったけど、今は少しは自分のことをできるようになったから」
「そうなんだぁ。じいちゃんに話しかけながら飲むのさ」とばあちゃん。
「でも、四十九日でお骨を納めに行くときは、寂しくて寂しくて、もういなくなっちゃうかと思うと、泣けて泣けて・・・・」もうすでに声が潤んでいます。
 それを見ていたお嫁さんの目にもみるみる涙があふれて
「ばあちゃんの寂しがるのを見て、また家族みんなで泣いたんですよ」
平均寿命を遙かに超えて生きて、ある意味寿命をまっとうした太郎さん。それでも、家族はその死を惜しみ悲しみ涙を流す。その家族の絆の温かさ、強さに私の胸はきゅ~~~~ん。
 亡くなる前には何度も何度も、ご家族とは太郎さんの看取りに関してお話し合いをさせていただいた。太郎さんの望む尊厳ある死と少しでも長生きして欲しい家族の気持ちと。揺れ動く心を共有し、そして太郎さんの望むようにしようとみんなで心を尽くした。
 その間にもかいま見せていただいた息子さんお嫁さんおばあちゃんのたくさんの涙は、とても尊く美しいものだったと思っている。
 そんな涙が第一位の胸きゅ~~~んでした 

お悔やみ訪問の意味 限りある命。だからこそ

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