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人生の出会いと別れ  ~ 大門先生のこと ~

カテゴリー:クリニックのこと 更新日時 2024/04/22

 大門先生がこの4月を以て退職されることになった。今までの単身生活を終え離れて暮らしていたご家族のもとに戻られるタイミングと老健廃止という法人の事情とが相俟ってこの4月となった。

 

 思えば大門先生との出会いは奇跡の重なりだった。

 

 北大の非常勤講師と札幌医大の臨床准教授としてプライマリケア関連で講義を続けている中で札幌医大と関連施設が起ちあげた「地域でプライマリケア医を育成する」「ニポポ」というプログラムに関わることになった。どうせ民間の小病院に研修医が来るはずもないという欲のなさと若き志ある医師にすこしでも私たちの経験を分かち合えたらという思いで参加していたのだが意外にもその熱い思いが通じたのか大門先生が一年間の地域医療研修先に我妻病院(当時)を選んでくれた。

 

 大門先生は東京のご出身で高齢者のための医療をしたいと医学部に入り直して医者になった人だ。ちょっとしたきっかけ(本人談)で北海道で初期研修を受けその後、後期研修で「ニポポ」を選択した。その人がはたまた後期研修の最終年を足寄の我妻病院で過ごすことになったという奇跡

 そして研修を終えて足寄を離れるとき、訪問診療を担当していたYさんご家族が先生が去ることを惜しみ涙された話をしてくれて先生の目も少し赤かったような気がするのは私の深読みだっただろうか。私が忘れられない大門先生の研修中の先生の言葉。「医師はパイロットとは違う。事故を起こせばパイロットはもろともに死ぬが医師はそうではない。だからこそ医師はより慎重に患者と向きあわなければならない」

 大門先生の「いのち」というものに対する真摯で謙虚な気持ちが言わせたこの言葉を私は自らへの戒めとして一生大切にしようと思っている。

 

 その後は北海道の地域の基幹病院に就職し、ニポポを通じて淡い交わりが続いていたが、またまた奇跡が重なる。

 

前理事長池田裕次が病気で退職せざるを得なくなったタイミングで大門先生も前職の退職を考えていて、急遽赴任してくれることになったのだ。それからの日々はスタッフや患者さんたちもよく知っていることと思う。優しくて少々不器用で学ぶことをやめない。研修医時代と変わらない「いのち」への真摯さ。私はどれほど支えられ守られてきたことだろう。

 

 そして、12年、干支が一回りしての双方の新たな旅立ち。先生の退職を知って惜しむ声。なにより私がロスになりそうで不安ではある。とはいえ先生の医師としての健やかな成長と成功を心から祈って旅立ちを祝したいと思っている。職場は変わるが関係性は変わらないと思っているので。

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