ナースブログ

オバQと一緒に看護した頃

カテゴリー:blogのこと 更新日時 2010/04/06

 20代の半ば、手術室の看護について悩んでいた時期にA君と出会いました。術前訪問に出向き、「明日手術を担当する...」とかけた言葉に振り向いたA君は、次の瞬間お母さんに飛びつき、まるでカタツムリのようにその胸に全身を埋めてしまいました。
 幼い頃から耳介形成術を繰り返してきたこと、手術室へ入室の度に泣き叫んでいたことをお母さんは静かに話してくれました。手術に伴う底知れぬ恐怖と不安、そして術後の痛みなど、大人でもすくんでしまう試練を何度も経験してきたA君はまだ5歳の小さな子供でした。
 どんな言葉をかけても押し黙ったままのA君がわずかに反応したのが、「オバQ知ってる?」でした。その夜、泣かないで手術を受けられるようにとの願いを込めて、唯一の接点となるオバQの絵を何度も練習しました。
翌日術衣の胸元にそれを貼り付けA君を迎えた私は、メガネをはずし大きな瞳でじっとみつめる彼に「今日はオバQがずっと一緒だからね」と声をかけ、麻酔導入までオバQの歌を口ずさみ続けました。そして彼は一度も泣かずに手術を終えることができたのです。
  その3日後、術後訪問に出向いた私を待っていたのは、「みんなこの人がオバQ先生だよ!」というA君の元気な声でした。「私にもオバQ書いて!」「ボクに も!」と、私は瞬く間にこれから手術を受けようとしている子供達に囲まれたのです。戸惑う私にA君は誇らしげにベッドの枕元を指差しました。そこには、あ のオバQがニッコリと微笑んでいました。最初に出会ったときのカタツムリの殻はもうどこにも見えませんでした。
 その夏の手術室は、さまざまなドクターやナース達が作り出した個性あふれるオバQが子供達の手術を迎えるようになったのでした。

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